北アルプスのおへそ的存在の鷲羽岳・水晶岳に登り、360度の展望を楽しみたい、ということと、雄大でなだらかな野口五郎や稀有な形の烏帽子岳を訪れたい、と言うことで、今年の夏は槍抜き裏銀座を縦走することにした。
同行は、去年と同じ、長野さん、河本さんのお二人で、息の合った三人パ-ティーである。 天候の落ち着かない今年の夏にしては、天気に恵まれ、北アルプスのほぼ全山と富士山、南アルプス、八ヶ岳、中央アルプス、御嶽山、白山などなど、贅沢な眺望を楽しむことができた。
日程は、第一日目わさび平泊、第二日目双六を経て三俣小屋泊、第三日目鷲羽岳、水晶岳、野口五郎岳を縦走し野口五郎小屋泊、第四日目烏帽子小屋から烏帽子岳を往復し、高瀬ダムに降りるという予定であった。ところが、私は第三日目の水晶岳を登ったところで、吐き気と下痢に襲われたので、まだ昼前の水晶小屋に泊まり込み、翌日烏帽子小屋に泊まり、一日遅れの行程を歩んだ。 同行の元気なお二人には、予定通りの行程で一日早く広島に帰還して頂いた。
2013年7月31日 新穂高温泉ーわさび平小屋(泊)
広島を朝早く出発し、新穂高温泉におりたったのは13時過ぎ、ここからいよいよ山旅の始まりである。 最近は、ロープウエイ駅がターミナルになったのか、売店もなくなり寂しい雰囲気だが、穂高登山指導センターに登山計画書を提出し、出発した。
ターミナル駅分岐から少し登ったあたりで、道の真中にたたずみ、カモシカの子どもが迎えてくれた。そばまで近づくまでじっとしていて、急斜面をあっという間にかけて下り見えなくなった。
わさび平に近づくと、大きな網を持った蝶ハンターがちらほら見られたが、声を掛けてみると、種類を確認するために一時捕獲するそうで、短い生涯を全うさせるためにピン止めにするようなことはしないそうである。
わさび平小屋は比較的空いていて、1人布団一枚と、余裕のある宿泊となった。 料理も良く快適な気分になったが、寝る頃には、猛烈な雷雨が小屋を襲い、明日の天気が心配された。 しかし、夜中には満天の星空にかわった。
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すっかり晴れ上がったわさび平小屋を5時30分に出発。 まだ初日で余裕があるが、ゆっくりペースで歩む。 この前9月に笠ケ岳をこの小池新道で登った時に比べて、今回は暑いせいか、結構登りがこたえる。 しかし、朝の日差しに輝く峰々が顔を出すのが楽しみである。 3時間30分で、鏡平に。 定番の池越しの槍、穂高を写真に収めてしばしの休憩をとる。
鏡平から弓折乗越までの急登もいつもながらきついが、登り切った時の槍・穂高の眺めが楽しみである。 今日も見事にその姿を見せており、鏡平を眼下にするこの眺めは、きつい登りを登り切ったものへの最高のご褒美である。
弓折乗越から双六小屋までも楽ではないが、きつい急登がなく、お花畑を愛でながらの道のりである。 途中、クロユリベンチで昼食を取り、バックに壮大な鷲羽岳を配した双六小屋到着が12時40分であった。
双六小屋から三俣への道のりは、最初の急登がかなりキツイ。 今回も省力化コースの巻き道を行く。 しかし、巻き道とはいえ、アップダウンの繰り返しと最後の三俣の分岐までの登りは相当こたえる。 中道を行ったほうがかえって楽かもしれない。 とはいえ、残雪を抱えた三俣蓮華岳とお花畑の連続が楽しめることと、迫り来る鷲羽岳、えりも岳、水晶岳の偉容が素晴らしい。 三俣小屋到着が14時30分頃であった。
2014年8月2日 三俣山荘ー鷲羽岳ー水晶岳ー水晶小屋(泊)
朝5時50分、きれいな朝焼けを楽しんだ後、三俣山荘を後にする。 今日もいいお天気で気分が沸き立つ。 しかし、目の前にそびえる鷲羽岳、相当なアルバイトを強いられそうである。 例によって、ゆっくりと小幅なステップを刻みながら、ジャリジャリした登山路を登る。 とにかく登っても登っても尽きることなく砂利道が目の前に立ちはだかる。 しかし、高度を上げていくほどに、周りの山々が、それぞれの個性を主張するかのようにその姿を誇らしげに見せてくる。 素晴らしい。
三俣山荘がだんだん小さくなり、山々に包み込まれ、頂上も真近になった時、メンバーの1人が、何故かこのタイミングで彼の携帯電話がないことに気づく。 山荘に電話すると、たしかに忘れ物として届いているということであった。 そこで、これから頂上に登る登山者に託すようにお願いする。 幸い、ツアーの添乗員の方が引き受けてくれて、頂上で待つ紛失者に届けてくれることになった。 携帯の電波が山荘に通じたというラッキーもあって、自分で往復するという地獄のようなバツを免れ、わずか30分の待機で携帯を手にしたのであった。 それにしても添乗員さんが、ツアー客を置き去りにして猛スピードで届けてくれたのには大感謝です。
鷲羽岳の頂上では、360度の大パノラマが迎えてくれた。 この時期にしては、霞がほとんどかかっていなくて、山々がくっきりと見える。 しばし言葉も忘れ、シャッターを押し続ける。 鷲羽池の向こうに槍ヶ岳という定番のショットもバッチリであった。
携帯電話が届くのを待つ1人を置いて、鷲羽岳頂上を後にし、ワリモ岳に向かう。 昔逆コースでこの山に登った時は、ワリモ岳への登りが結構きつかったように記憶しているが、今回はそれほどでもない。 それでもしんどい思いで登り切って、頂上の逆側でゆっくり休憩して座り込んでいると、なんと、もう、かのメンバーが追いついてきた。 彼は若いし、我々に比べて相当余裕を持って行動していたから、さもありなんというところか。
ワリモ岳を下りきり、水晶小屋までの登りも何とかこなし、水晶小屋に到着したのが、9時45分というところか。
水晶小屋からの北側の眺めも最高で、剣を含めた立山連峰、後立山連峰から野口五郎岳にかけての眺望が素晴らしい。 しばし休憩の後、ザックをデポして水晶岳へ。 高低差があまりないのと、空身のせいもあり、水晶岳へのピストンはあまりきつくは感じず、高山を感じさせるちょっとした岩場を楽しみながら、登ることができた。 以前登った時も快晴であったが、その時に比べて今回は霞がかかっていないでくっきりと山々が眺望できる。 時間が経過するに従って、穂高や立山連峰の頂上付近に雲がかかってきて残念であったが、これまでたっぷり眺めさせてくれていたので、お礼を言いたいぐらいである。
水晶小屋に帰って来る途中、私に軽い吐き気が襲うようになり、きつい下痢にも襲われ小屋のトイレに飛び込んだ。 小屋の前から長々と続く野口五郎への道のりを眺め、私には、情けないことにこの日の行程を全うすることへの気力が失われてきた。 行く気になれば行けたであろうとは思うが、つらい思いをしてまでも歩き続けたくないと言う後ろ向きの思いが打ち勝ってしまった。
ところが、まだ時間は昼前である。 そこで、元気な仲間お二人には、予定通りの行程を取ってもらい、私一人が水晶小屋に残ることにした。 最初は躊躇していたお二人も、それほどひどい症状ではなく、ソロには馴れている私の強い勧めで、元気よく水晶小屋を後にした。
その日の水晶小屋は、この小屋にしては空いていて、1人布団1枚と言う贅沢さで泊まることができた。 早々と寝込んで元気を回復した私は、おやつにカップめんを食べ、夕食のカレーをおかわりするほどであった。
<続編:その2> 山行記: 「野口五郎岳-烏帽子岳-高瀬ダム」についてはこちらを御覧ください。
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