焼岳山行記

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 北アルプスの玄関口ともいうべき上高地。その玄関先で異彩を放つ焼岳。何時でも登れると言う気でいたら、なかなか登る機会をつかめずにいた。この度、久々の秋晴れの予報を見て、急に思い立っての登山となった。

 三連休の初日とあって、上高地近辺の宿屋はどこも満員。この時期、涸沢をはじめとする紅葉スポットを訪れようと観光客、登山客が殺到するのだ。やっと、 ラッキーにも明神池の「山のひだや」さんに空きを見つけ、前日予約にこぎつけた。広島から上高地に2時頃入り、翌日焼岳に登り、どこかの温泉に泊まり、翌 日乗鞍岳あたりを散策しようかという算段である。

2013年10月12日 上高地ー明神池(泊)

 広島から薄曇りの上高地に入ったのが午後の2時頃であった。バスを下りると風が強くすこぶる寒い。周りの人は皆防寒着に身を包んでいる。私もダウンの ジャケットを取り出して着こみ、人をかき分けるように河童橋を渡り、梓川の向こう側の道を明神池へと向かう。穂高連峰は雲に包まれていて、上部は身を隠し ているが、秋の気配を感じさせる佇まいである。

 明神池に向かう遊歩道は、いつもと違って散策客が非常に多くて賑やかである。急ぐ必要もないので、ゆっくり秋の気配を楽しみながら歩く。ところどころに 真っ赤な葉をつけた木々が現れるが、全体的には、茶褐色の沈んだ雰囲気である。しかし、これはこれで趣がある。一時間半ほどで着いた明神池は人が少なく、 静かに、静かに迎えてくれた。実に久しぶりに訪れたが、秋には初めてのことであり、赤く染まった灌木が浮かぶ池にしばし見入って、日頃では味わえない癒や しの時を過ごした。

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2013年10月13日 明神池-上高地-焼岳-中尾温泉-広島

 前の晩寝る前には、強い雨が屋根を叩きつけていたが、目覚めてみれば、快晴。朝日に染まる明神岳や焼岳を眺めながら、ご機嫌で上高地に向かう。朝早いの で、すれ違う人はみな大きなザックを担いだ人たちで、途中分岐から岳沢に向かう人達を見たときは、思わず付いて行きたくなってしまった。

 上高地に着くと、雪化粧した穂高連峰が目に飛び込んできた。すばらしい。めったに見られない光景である。まだ6時半だというのに、多くの観光客が行き来していて、皆、この幸運な朝を楽しんでいるようであった。
 ここのカフェで、朝食を取って、いざ出発である。

 梓川沿いの道を、沢山のお猿さんに挨拶しながら進み、焼岳登山路への分岐に着いたのが、午前8時。ここからいよいよ登りが始まる。始めの1時間あまりは 眺望のきかない樹林帯の道である。沢山の人達が登るであろうこの登山路は、意外にもあまり手が加えられていなくて、結構登りづらい。夏道のように暑くない ので、順調に高度を上げるが、やはり登りはキツイ。
 一時間ちょっと登ったところで、前方に焼岳の南峰(だと思う)が姿を見せはじめる。山裾がうっすら紅葉で赤くなり始めていて、きれいである。右の斜面の小灌木は見頃をやや過ぎているようであるが、崖の一面を赤く飾っている。
 結構長いハシゴのいくつかと、鎖場を登り切ると、やがて焼岳小屋に到着。丁度10時の到着であった。

 小屋から登ること10分、展望台に付く。ここからの眺めもなかなかであるが、ここから登るに連れ、背後に穂高連峰、槍が岳、右手に笠ヶ岳。左手前方に乗鞍岳など、山々が展望できて素晴らしい。そして、ところどころ噴煙が穏やかに噴き出している、ガレガレの斜面の登りは焼岳ならではである。  このきつい斜面をやっと登りつめ、左に回りむと、さらに登りは続くが、頂上が望めるようになるので、気を取り直して、ひたすら登る。小屋から1時間ちょっと、頂上直下の鞍部に出る。ところが、ややや、頂上への道に長い行列が。一箇所、履行できない場所があり、片側交互通行なのである。結局、往復45分を要して頂上を極めた。

 頂上からの展望は、申し分なし。若干雲の流れが穂高連峰を薄く隠すことはあっても、360°の大展望である。槍ヶ岳から笠ヶ岳に連なる稜線もくっきり見 えているが、三股蓮華岳、双六岳の向こうに頭を出しているのは、野口五郎に鷲羽、水晶、黒部五郎であろう。しばし、この景観にたたずむが、ゆっくりはして いられない。すぐ行列に並ばなければ。

 頂上から小屋に戻り、ゆっくりと昼食を取る。予定より頂上で時間を要したので、遅めの昼食となったが、「やまのひだや」で用意してくれた握りめし弁当に、湯を沸かして豚汁、デザートにぜんざい。  このあと、小屋を後に中尾温泉に下り始める。このコースは歩きにくい上に展望もなく、面白みがないので、ただひたすら下る。それでも途中、名残の笠が岳、焼岳や、何とかいう滝の展望を楽しんだ。、今日の宿が決まっていないので、なるべく早く下に降りようと、パーティーを次々追い抜き、2時間弱で中尾温泉に到着。

 中尾温泉のどの宿も満員。バスに乗って平湯温泉に出ても、高山に出ても、どこでも宿が見つからず、とうとう広島に帰着してしまった。最終電車で我が家に辿り着いたが、長い長い一日であった。  ゆっくりと温泉にもつかれず、乗鞍岳の散策もかなわなかったが、素晴らしい上高地、焼岳を満喫できたので、今回も満足の行く山行きであった。




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