今年の8月の天候は晴れ間が続くことがなく、予定していた本山旅を果たせないまま、とうとう9月を迎えてしまった。もう今年は出撃の機会がないかなとかなりモチベーションが下がっていたところへ、前々から出来ればご一緒しましょうと話し合っていた村上さんから、「あさってから出発しますよ」と言うメールが届いた。私も天気予報を見ていて良さそうだなとは思ってはいたが、もひとつ迷っていたところだった。
村上さんから引っ張られる格好で出撃を決意したが、出かけてみると、見事に好天気に恵まれ楽しい山旅を果たすことができた。村上ご夫妻に大感謝である。
今回の山旅は、第一日目に広島から室堂・雷鳥沢入り(テント泊)、第二日目に奥大日岳ピストン(テント泊)、第三日目に室堂山-浄土山-龍王岳-雷鳥沢(テント泊)であった。
広島から、室堂入りしたのが、15:30。 連休前の金曜日とあって、最盛期ほどではないが賑わいのあるターミナル前の水場で、まずは立山の玉殿の湧水でのどを潤す。ここから、雷鳥沢を目指して、重たい荷を背中にしょって出発である。 ガスが多少かかっているが、天気は悪くなく、歩いているうちにだんだん立山の山並が見渡せるようになった。みくりが池、地獄谷、湿原などを見ながら進み、雷鳥荘当たりの展望台からは立山連峰の全貌が見渡せるようになった。素晴らしい。眼下には、今日テントを張る雷鳥沢キャンプ場が見えるが、テントの数は多くはないようである。
テント場は山々に包み込まれるような台地となっていて、なかなか気分良く過ごせそうである。村上さんと隣り合わせでテントを張り、 室堂ターミナルで仕入れた、ますのすしおにぎりと味噌汁などで夕食を済ませ、夕やけの立山連峰を眺め、早々と眠りにつく。
爽やかな朝を迎えた。快晴である。朝食を済ませると、別山に向かう村上ご夫妻とは別行動で、単独で奥大日岳に向かう。
室堂乗越までは、かなりの急登であるが、朝一のアルバイトとあって、極めて調子よく高度を稼ぐ。高度が上がるにつれ雷鳥沢、地獄谷の展望が眼下に広がる。立山連峰はもちろん屏風のように迫っている。乗越からは、なだらかな稜線歩きになるが、結構きつい登りも待っていて、それ程楽ではない。そして、室堂平が眼下に広がってくる頃、逆側の別山の裾に隠れていた剣岳が顔をのぞかせてきた。歩を進めるたびに、剣の雄姿がどんどん現れ、その威圧感に圧倒される。
やがて西側斜面をトラバースして尾根の東側に出ると、剣岳がますます迫力をもって迫ってくる。毛勝三山も大きな姿を見せている。奥大日岳山頂も間近となり、その向こうに大日岳がはっきりその姿を現している。
奥大日岳山頂は狭く、落ち着いて座る場所もない程の山頂ではあるが、眺めは最高である。特に目の前の剣には、何度も言うようだが、圧倒される。
山頂を後にして、復路に差し掛かるとすぐに、奥大日岳最高点と地図に記されているピークがある。そこに向かう分岐には、通行禁止の標識があるが、ここを逃すわけにはいかないということで、立ち寄ることにした。登っているとき、下の方から大きな女性の声で「そちらは通行禁止になっていますよ」と注意された。「ピークまでは行けるので行ってきます」と答えて、「ありがとう」と付け加えた。 最高点からの眺めは最高であった。360度の大展望である。人もほとんど登ってこないので、ここでゆっくりすることにした。お湯を沸かし、まず村上さんの奥さんからいただいたコーヒーをドリップして飲み、さらに、パンとコーンスープの昼食を取り、クッキーと紅茶でゆっくり締めくくった。気が付けば、ここで1.5時間以上過ごすことになった。このようなのんびりした時を過ごせるのも、テント泊の良さの一つではなかろうか。
奥大日岳最高点を後にして、雷鳥沢への下りにかかる。あれだけゆっくり過ごしたのに、まだ時間はたっぷりあるので、のんびり大展望を楽しみながら下る。テント場につくと、連休初めの土曜日とあってテントの数がぐっと増えている。賑わいのあるのも、これまた良しとしよう。
まだ1時過ぎなので、雷鳥沢ロッジの温泉にゆっくりつかり、さっぱりしたところで、ロッジの食堂でおでんに生ビール。ご機嫌になったところで、マイテントに戻ると、村上ご夫婦が別山からご帰還になっていて、入れ替わりに温泉・夕食へとロッジに向かった。私は、ガーリックトーストとフリーズドライのパスタとスープの夕食を取り、周りの人たちと歓談したのち、早々とシュラフにもぐりこんだ。
満月が東に沈み朝日が立山の上に顔を出す朝を迎えた。今日も快晴である。今日は室堂の西サイドに位置する、室堂山、浄土山、龍王岳を登る予定である。計画時点では、さらに立山にも登るつもりであったが、過去に3度も登っているし、そんなに無理する歳でもないので今回は見送ることにした。朝食を済ませ、早速まず室堂に向かう。今日は村上ご夫妻と一緒である。 室堂へはおととい歩いてきた同じ道を行くが、同じ景色でも、所々で新鮮な感動が得られる。昨日登った奥大日岳の雄姿やみくりが池に映る山並み、などなどを楽しみながらの歩行である。
室堂から室堂山に向かう。なだらかな傾斜の登りである。そして、室堂山と言ってもどこが山頂?、むしろ浄土山の麓という感じである。しかし、室堂山展望台からの眺めは素晴らしいもので、北側は雲海に覆われていたが、南側の北アルプス南部の眺めは一級品である。手前に五色が原、赤牛岳、その向こうに西から、薬師岳、黒部五郎岳、雲ノ平、笠岳、双六岳、三俣岳、水晶岳、鷲羽岳(裾だけ)、穂高岳、槍ヶ岳、野口五郎岳、、。
室堂山はむしろ立山火山の最高点としての意義があるらしい。雄山を中心とする立山連峰は火山ではなく、室堂山には過去噴火口のある大きな山があり、今の地獄谷と連なった火山を形成していたということである。我々が浄土山に登ろうとしていたところ、富山県の地質関係の研究所の方と偶然立ち話することになった。彼の話によると、浄土山は花崗岩(白い)で形成されていて、その地層の下に室堂山の溶岩(黒い)がもぐりこんでいて、丁度浄土山登山口付近にその重なった地層が見られることを教えてくれた。なるほどと写真に収めたが、上側に白い岩、下側に黒い岩があることがお分かりいただけると思う。会った人に気軽に話しかける私の習性が産んだ収穫でした。
浄土山(北峰)への登りは、とにかく急である。岩をよじ登る感じのところが随所にあり、北アルプスでも急なことではトップクラスだと思う。しかし、時間にして30分位の登りなので、それ程大げさに言うこともないかもしれない。登りつめた北峰には、軍人霊碑が石垣の中にあり、そこからの立山方面の眺めが素晴らしい。と言っても、この辺りどこからでも四方の眺めは1級品である。
北峰からほとんど登りのない南峰には、富山大学立山研究所の施設がある。一の越から五色が原へ抜ける人たちなどで賑わいを見せていた。
浄土山南峰からすぐ南に見栄えのする岩山が見える。龍王岳である。村上さんのご主人がご執心の山で、ぜひ行ってみようということになった。すぐそばなので、荷物を置いて、ペットボトルを右手に出かけた。とにかく岩の塊のような急峻な山で、楽しんで登っていると、あっという間に登り切ってしまった。ここも、眺めは最高である。立山周辺はもちろん、北アルプスの全域を目にすることができる。針ノ木岳の雄姿が間近である。
浄土山南峰からは、立山への登山者で賑わう一の越に下り、さらに室堂経由で雷鳥沢に帰還した。
今日も楽しい山歩きができて満足、満足。ロッジでゆっくり温泉につかり、牛丼と生ビールの夕食で締めくくった。
好天気の朝を迎えた。山々の頂上部にかかっていた雲もだんだんなくなり、今日も快晴である。本当にお天気に恵まれた4日間であった。テントを撤収し広島へご帰還である。
重い荷を背負っての雷鳥沢から室堂への登りは、かなりのハードワークできつい。ようやくみくりが池付近で余裕を取り戻す。もうすっかりおなじみになっている景色ともお別れである。
初日、室堂に到着した時に飲んだ玉殿の湧水を口にして、楽しかった立山に別れを告げた。最後になりましたが、ご一緒して頂いた村上ご夫妻には心強いパートナーとして何かとお世話になり、ありがとうございました。この山旅の楽しさを倍加させて頂きました。感謝。
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