中央アルプス(木曽駒ケ岳,宝剣岳、空木岳)縦走

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 今年の夏山のメインに選んだのは、中央アルプスの主峰の縦走である。 前からなんとなくそそられていたのと、ロープウェーで楽が出来そうだということと、何より増して、写真で見る宝剣山の威容である。 今回も、ひろでん中国新聞旅行のツアーに参加しての山行で、広島から夜行バスで駒ヶ根に入り、その日のうちに駒ケ岳に登り、翌日宝剣山を経て木曽殿山荘まで縦走、最終日は空木岳に登って、一気に下る2泊3日+車中泊という日程である。

 ツアー参加者は、女性がグループ参加を含めて7人、個人参加の男性が5人、それにガイドさんと添乗員さんの14名のパーティーであった。 中級コースということであったが、参加者はベテランぞろいで(歳のほうも?)、安心感漂う楽しい山行であった。

2005年7月30日 千畳敷ー乗越浄土ー木曽駒ケ岳往復ー宝剣山荘

 ロープウェーを降り立った千畳敷は登山客や観光客でにぎわっていた。 山々には薄い霧が立ち込めていたが、広いカール全体が見渡せ、まずまずの天気である。 天気予報では、曇りまたは雨ということだったので、これならまずまずである。
 千畳敷から乗越浄土までは(あるいは駒ケ岳山頂までは)遊歩道という感じで、すこぶる歩きやすく整備されている。 ロープウェーを降り立った人々がにぎやかに列をなして登っていく。 我々も女性陣を前にして隊列を組み登り始める。 今回のガイドさんは、大町でロッジを営む傍ら登山ガイドをしている河内さんである。 河内さんは豊富な山暦が滲み出ているような風貌で見るからに頼りになりそうな人である。 事実この山行を通じての見事なリーダーぶりと、ゆっくりではあるが確実にペースを刻む進行は、特に女性陣には絶大な人気を博した。 私ももちろん感謝の気持ちで一杯である。
 沢山の人と列を成して登り、一汗かくころ乗越に到着。 カールは見渡せるが、山々は霧の中である。

 乗越にある宝剣山荘が今夜の宿になるので、ここに荷物を置いて、身軽ないでたちで、いざ、木曽駒ケ岳への往復である。
 まず、駒ヶ岳へは中岳を乗り越えることになるが、高低差が余りなくほんの一登りで山頂に付く。 山頂で一息ついていると、霧の切れ間に今まで隠れていた駒ケ岳が姿を現す(左)。 おーっと皆の歓声。

 中岳からは、緩やかな傾斜の下りで一旦頂上山荘のある背まで下り、そこから登り返して駒ケ岳山頂に到達する。 緩やかな傾斜で道もよく快適な行程である。

 山頂からは残念ながら360度の眺望とはいかず、遠くの山は見えないが、霧がかかった宝剣岳が威容を見せている。 早く登りたい。 そんな気をそそる山容である。 宝剣山荘への帰り道は、中岳を右に巻く道を選ぶ。 途中ちょっとした岩場があり、明日の予備訓練としてはちょうど良い。

 山荘での長い午後を同行諸氏と山談義をしていると、霧が晴れてきたので、伊那前岳に足を伸ばす。 ほんのちょっとの登りで、山頂に着くと、霧の中に明日訪れる縦走路の先に空木岳が見え隠れしている。 空木岳の右手に見える南駒ケ岳の山容も立派なものである。

2005年7月31日 宝剣山荘ー宝剣岳ー檜尾岳ー熊沢岳ー東川岳ー木曽殿越

 朝目覚めると、なんと快晴。 天気予報では、きわめて雨の確率が高いことになっていたのに、一体誰の行いがこんないよかったのだろう。 寒い中を5時の日の出にあわせて、宝剣岳のすぐ下まで登って待ち受ける。 いつものことではあるが、出そうで出てこないじれったい気持ちを抑えていると、雲の下の予想外のところからまん丸な太陽が。 これまでに見た中でも、最高クラスの日の出である。  6時に山荘を立ち、宝剣岳に向かう。 向かうといっても目と鼻の先である。 ちょっとした岩の大きいのという感じでもある。 難所の岩場に向かうときのいつもの緊張感を感じる。 しかし、思ったほどの岩場でもなく、ちょっとした鎖場を抜けると頂上である。 しかし、威容を誇る宝剣岳の上に立った喜びは大きい。 山頂にちょこんとある上が平らな岩に登っている人がよくいるが、私にはちょっと怖そうなので、近づかないようにするが、その下の踏み台みたいなところまでは同行の諸氏がいって手を振っていた。 山頂はきわめて狭く、次に登ってきた人たちが空くのを待っている状態なので、写真を写すと早々に下りに取り掛かる。  宝剣岳の南稜の下りは、難所として有名であるので、心して下りにかかる。 確かにちょっとしたスリルはあるが、思ったほどではない。 この程度かと思っているうちに下にたどり着く。 高低差も余りないので物足りない感じさえするが、まずまずほっとする。 ところが、この縦走路には、ここより緊張する難所が何箇所かあって、全体としては北アルプスの難しいとされている縦走路に引けをとらないように思える。
 (下の写真は宝剣岳への登りと下り)

     

宝剣岳から、行く手の縦走路のかなたに南駒ケ岳、空木岳(左)を眺める。

 宝剣からは今日の長い長い縦走が始まる。 のんびりとした稜線歩きを思い描いていたのが、とんでもない。 とにかくアップダウンが多く、高度差も大きい。 しかも、ところどころに難所が待ち受けている。

 宝剣岳を下りきってもしばらくは岩場が続き緊張を強いられる。 ここを過ぎてようやくのどかな稜線が続き、極楽平、島田娘とつかぬ間の平和を楽しんでいると、遠慮会釈のない下りが待っている。 こんなに下ったらもったいないと思うほど(300m強)下り今度は登り返して濁沢大峰に立つ。 さらにここから下って、大きく登り返すと檜尾岳となるが、この間の鎖場も緊張を強いられる。

 檜尾岳にてのどかな昼食をとる。 チングルマのお花畑が気分をやわらげてくれる。 檜尾尾根が見渡せ、広い尾根に立つ避難小屋が印象的である。 振り返れば、宝剣・駒ケ岳が薄もやの中にそびえ、行く手には、手ごわそうな尾根に続いて特徴的な岩がそびえる熊沢岳、それに続く稜線が眺められる。

 檜尾岳から熊沢岳までは、大き目なピークだけでも4つほどあり、岩場も多くて結構きつく、時間がとられる。 途中の大きな斜めになった一枚岩のところは、すべると転落の恐れがあるため、ガイドの河内さんが用心のためザイルを取り出す。 ところが、皆ザイルなしで用心しながら通過してしまったが、一人の篤志家がザイルを固定して渡り、ガイドさんのホールドの仕方などを見るには大変参考になった。 さらに、軽いオーバーハング状になったところで、岩に固定された鉄の輪をつかんでクリアーしなければならない所があるなど、結構疲れさせられる箇所であった。  熊沢岳を過ぎると後は下りながらピークをこなしていくことになるが、ここからも結構長い。 この辺では霧の中を進む状態になり、また、祭りが過ぎたような感覚で、ひたすら上り下りを繰り返していると東川岳に到着。 ここから一気の下りである。 この下りも200m近くあって、疲れた身体にはこたえるが、霧の中に木曽殿山荘が垣間見られたときは本当にほっとした。

 木曽殿山荘はまだ新しい感じでとてもきれいな山荘であった。 到着後にティーサービスがあるなど、こじんまりとした小屋なりの暖かみを感じた。 到着後早速皆と缶ビールを飲み山談義を楽しんだが、私にはこれが応えたか、夕食時に全く食欲が感じられない。 皆がご飯をお代わりする中、ひとり苦労して何とかおかずを飲み込む。 こんなこと久しぶりだが、気にはならない。 特に身体に変調をきたしているわけではないのだから。 明日は早い。 8時消灯、すぐ寝付く。

2005年8月1日 木曽殿山荘ー空木岳ー駒ガ池

 朝4時、暗闇の中を出発する。 今日中に一風呂浴びて広島に帰るには時間の余裕がないのだ。 小屋を出ると、すぐに空木岳への急登が始まる。 岩のごろごろした道を、まだ体が眠っている状態でひたすら足を前に出す。 それでも朝一のアルバイトだから、そんなにつらくはない。 昨日降りてきた東川岳の高さにぐんぐん追いついていく。 前を行く女性陣から歓声が上がる。 朝焼けの中に八ヶ岳が浮かび上がってきたのだ。 そして2度目の歓声。 夢中で上がってみると、今日も見事な日の出である。 八ヶ岳を左に、南アルプスを右に雲間に浮かぶ真っ赤な太陽。 すばらしい。 宝剣岳の上には朝焼けに染まった雲がかかり輝いている。 背後にはうっすらと大きな山容を誇る御嶽山が見える。  山頂に近づくと思わぬ岩場が待っていた。 結構きつい。 脚の短さを何度も嘆かされるような岩場を通過していると、突然のご褒美が。 ブロッケンである。 虹色に輝く霧の中に、手を振る自分の姿が浮かび上がる。 またまた素晴らしい。 

  

 空木岳の山頂からは、八ヶ岳、甲斐駒ケ岳、仙丈ケ岳、北岳、塩見岳、荒川岳などなどの山容が朝もやの中に浮かび上がっているのが見られた。 (写真は、八ヶ岳、甲斐駒ケ岳、仙丈ケ岳)

 空木岳からの下りは、空木平経由の道を選ぶ。 空木平は、お花畑に囲まれ、空木岳が眺望できる素晴らしいスポットである。 避難小屋にしてはとてもきれいな小屋が立ち、水場もある。 ここで、朝食をとりながらしばしの滞在である。 ここから、尾根沿いの縦走路に合流するまでの登りも、道の両側に花が咲き乱れ、楽しませてくれる。 今回の山行でも、とにかく花が豊富で、花に余り興味がない私でさえ、思わずカメラを向けてしまうほどであった。 同行者にも花に詳しい人、花の写真を撮り続ける人など、ほとんどの人が花に関心を寄せていた。

 尾根に合流してからの下りはつらいものであった。 とにかく下るのか下らないのかはっきりしてくれと言いたくなるような、しょっちゅう登りが伴うだらだら下りである。 距離的にも相当あるためであろうが、いけどもいけども高度が下がらず、しかも大きな蛇行が続く。 広島への到着時間さえ気になる状態になったためか、隊列の下る速度がやたら速くなる。 後ろから付いていく私も小走りで付いていく状態になり、思わずよろけそうになりながら必死で追いかける。 何ともはや、皆の強靭さに感心しながら付いていき、駐車場で待機するバスの姿が見えたときは、へたり込みそうになったほどであった。

 1時間のお風呂休憩を、露天風呂と地ビールとざるそばで過ごすと、すっかりとはいかないまでも、体が回復し、それほど痛みも感じず、程よい疲労感が残っている程度になった。 帰りの長い長いバスの中でも、同行諸氏との会話で盛り上がり、来年の山行の約束まで話が進むなど、楽しいものであった。 今回も楽しく動向させていただいた皆さんと、沈着で頼りになるベテラン添乗員さんに心からの感謝を申し上げます。 なお、同行の皆さんで、頂上での集合写真がお入用の方はこちら


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