奥穂高岳・涸沢岳登頂記

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 9月末に紅葉の涸沢に出かけることになっていて、その時期の涸沢の混雑ぶりも思いやられるので、テント泊もありかなと思い、ソロ用のテントを購入した。早速どこかでテント泊を試してみたいと思ったのだが、場所として、かねてから、こんなところでテント泊してみたいと思っていた上高地の徳沢しか思い浮かばない。現地の天気予報を調べてみると、丁度3日間ほど好天気が続くようだ。よし。

 初日、徳沢で快適なテント泊を経験し、2日目、涸沢に向かうことにしたが、このテントを撤収し、重い思いをして運ぶのがおっくうに感じられ、テントは張ったままで置いておくことにした。それなら、その日のうちに奥穂高山荘まで行けるし、小屋泊まりをして、奥穂高に登れる。

 結局、初日:上高地-徳沢(テン泊)、二日目:徳沢-涸沢-奥穂高山荘(泊)、三日目:奥穂高岳・涸沢岳-涸沢-徳沢(テン泊)、四日目:徳沢-上高地-広島、と言うことになった。
 初日から三日目まで、絶好の好天気に恵まれ、素晴らしい山行となった。その素晴らしさは、以下の写真を見ていただければ感じ取っていただけると思う。しかし、反面、ザイテングラードの急斜面の登りでは、まだかまだかと、疲れ切った体を持ち上げたことも付け加えなければならないだろう。

2017年9月8日 上高地-徳沢(泊)

 広島から、新幹線、在来線と乗り継ぎ、高山からのバスで上高地入りしたのが、13:30。上高地は相変わらずの賑わいだが、残念ながら、穂高連峰の山並みは雲の中である。河童橋付近や途中の明神でゆっくり休憩を取ったりして、徳沢入りしたのが15時過ぎであった。
 早速手続きをすませ、明神岳がよく眺められる場所にテントを張る。この時期、金曜日と言うのに、テントの数が少なくて、静かな夜を過ごせそうだ。テン泊するのは、子供が小学生のころ、久住や四国カルスト台地で、ファミリーキャンプして以来のことである。周りでテントを張っている人たちとも会話を交わし、和やかな時を過ごした。
 徳沢園のレストランで、イワナ定食と生ビールで夕食をすませ、20:00には眠りについた。夜中に一度トイレに行った以外は、朝の5時まで爆睡した。寝心地は良好であったが、朝方、寒さを感じて目を覚ました。


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2017年9月9日 徳沢-涸沢-奥穂高山荘(泊)

 持参したパンで朝食を済ませ、朝焼けに輝く明神岳を背に、涸沢に向かう。テントを背負って涸沢に向かう予定であったが、どうも私の装備では、涸沢での寒さに耐えられるかどうか心配なのと、何よりも、こんな重いものを背負って山道を登るのは気が進まない。と言うことで、テントは張りっぱなしで置いておくことにした。
 翌日山を下り、徳沢に帰る路では、テントが待っているということが、我が家が待っているような感覚になり、心強さを感じた。

 涸沢への路は、本谷橋までの平らな道がだらだら続くのと、本谷橋からの緩やかながら延々と続く登りで、案外疲れるが、北穂が見えだし、やがて穂高連峰の中心が姿をあらわすと、その素晴らしさに打たれ、あれに登るのかと言うわくわく感が全身にわいてくる。いつ来ても、素晴らしい。
 でも、それにしても、疲れます。涸沢ヒュッテに着いたときは、やれやれと思うのだが、一方で、目に飛び込んでくる山々の姿に圧倒される。


 涸沢ヒュッテのテラスで、周りの雰囲気にどっぷりつかって休憩を取った後、いよいよ奥穂高山荘に向かう。涸沢からザイテングラードの取っ付きまでのガラガラ道は、案外疲れるものと覚悟していたが、今回は、とっても疲れた。結構日差しも強く、ほとばしる汗に匹敵するだけの水分が取れていなかったのだろうか、軽い熱中症にかかったのかもしれない。したがって、その後のザイテングラードの急登は前に登った時の何倍もの苦しみを味わうことになった。とにかく、酸素が欲しい。酸素、酸素。
 この急登で、私同様、ヘロヘロになっている人も多く見かけたが、やはり若い人の登りは力強い。若い女性のソロも増えたなぁ。喜ばしいことなのだが、喜ぶ気力もわくどころではなく、やっとの思いで山荘に着いたときは、本当にほっとした。

 この日の奥穂高山荘は一枚の布団に2名という混雑ぶりで(私は幸運にも一枚を独占したが)、3時のだいぶ前には到着していたのに、夕食にありつけたのは4番目のグループで、7時前となった。北穂、白出沢、岳沢、涸沢、西穂などいろいろな方面から来た人の話を聞ける楽しさはあったが、昨日のテン泊と比べると、その騒々しさには閉口した。

2017年9月10日 奥穂高山荘-奥穂高岳-涸沢岳-涸沢-徳沢(泊)

 朝2時ごろから周辺がざわつき始め、次々と準備を整えた人が出発していく。そしてなんと、3時には全館の明かりが灯り、ほとんどの人が一斉に起きだした。私も随分山小屋宿泊の経験があるが、こんなに早いのは初めてである。さらにもっと驚いたのは、5時に始まる朝食の順番取りに、4時のかなり前から長蛇の列ができていることである。1時間以上、立って待っているのなんて、クレイジーである。私は、奥穂高をピストンで登った後、6時ごろ食堂に行ったが、私一人でゆっくり朝食をとることができた。

 ヘッドライトを灯した人たちの列に加わり、小屋からすぐ始まる崖の急登に取り掛かる。なぜ、登山者は岩場になると急いで次々と登るのか。私もみんなのペースで、岩場、鎖場、はしごと次々に素早くこなし高度を上げていく。その内年寄りにはきつくなって、立ち止まって周囲を眺める。下を見おろすと、高度感がすごい。
 やがて、涸沢岳越しに北穂高はもちろん、槍、北アルプスの山々が見えるようになる。素晴らしい景観である。

 急な岩場を登り切ると、急斜面の登りとなるが、やがて、奥穂の頂上、西穂高岳への稜線が見え始める。もう、ジャンダルムの上に人影も。このあたりで日の出を迎えるが、雲の合間に太陽が顔を出すという、あまり感激のない日の出を迎えた。
 頂上直下まで晴れていて、西穂への稜線も眺められたのに、急にあたりが雲に覆われ始め、頂上に着くころには周りが真っ白になった。もう少し待てば晴れるのはわかっていたが、ここからの景観は次の機会に残すことにして、朝食の待つ山荘へ下山した。途中、横尾から一緒になったパーティーが、奥穂、前穂へと向かうのとすれ違い、お互いの無事を祈って言葉を交わした。

 奥穂高山荘に戻り、ひっそりとした食堂で一人朝食を済ませると、すっかり雲も切れているので、涸沢岳にピストンで登ることにした。ガラガラの急斜面を登り始めると、さっき下りてきた奥穂への急斜面が目に飛び込む。実際に登り下りしてきたよりも、すごく恐ろしそうに見える。
 涸沢岳の頂上の展望は、言葉にできないぐらい素晴らしいものだった。写真愛好家がここを目指すのがわかるような気がする。北穂への厳しい稜線、そしてどっしりした北穂。さらに、なんといっても、槍。どこから見ても素晴らしい。槍の向こうにも山々が連なる。振り返れば、奥穂、前穂、西穂、に焼岳、笠岳。それと、蝶が岳等々。

 奥穂高山荘を後に、昨日苦しめられた急斜面を涸沢に下る。やはり下りは楽で、辺りの景色を眺める余裕がある。ところどころで、ゆるりゆるりと下る同年配の人たちと(と言ってもみんな私より10歳ぐらいは若い)、会話を交わしながらの下りである。
 涸沢小屋に向かう途中、徳沢のテント場で隣同士になり懇意になった江橋さんと偶然出会った。これから周回コースで涸沢ヒュッテに向かうというので、私は涸沢小屋に寄って、ヒュッテで出会うことを約して、すれ違った。
 涸沢小屋では、ソフトクリームとジュースでのどを潤すなどゆっくり休憩を取り、涸沢ヒュッテに向かう。ヒュッテで江橋さんと出会い、カレーライスの昼食を取りながら、一級の山々に囲まれた涸沢の素晴らしい雰囲気を楽しんだ。

 涸沢から徳沢へは長い長い道のりであるが、幸い江橋さんと楽しい会話を交わす下りとなったので、とても楽しいものになった。何度も通った路で、特段の感激もないが、途中、何時も登りで休みを取るスポットから、涸沢小屋が見えることを江橋さんから教わった。こんど来た時には、あそこが涸沢か、と、期待を込めて眺めることができそうである。
 さすがに横尾から徳沢に向かう時になると、一日の疲れが感じられるようになり、まだかまだかと、やけにマイテントが恋しくなる。やっと徳沢にたどり着き、テントに転がり込んで、しばし横になってのお休みタイムである。

2017年9月11日 徳沢-上高地-広島

 昨夕は、ロッジでお風呂に入った後、隣のテントで何とかというアフリカの楽器を奏でる40歳ぐらいの男性とともに徳沢園のレストランで夕食を取りながら談笑した後、7時には眠りにつき、朝までぐっすり爆睡した。今朝は、急ぐ旅でもなし、喫茶でコーヒーを飲んだり、周りの人とゆっくりとした朝を過ごし、9時ごろ徳沢を後にした。
 河童橋を渡り、穂高連峰絶好のビュースポットのベンチで、しばし雲の切れるの待ったが、残念ながらもう少しで稜線が見えるところまで行ったのが最良のビューであった。一般の旅客が興味本位に話しかけてくると、「昨日あそこに登ってきました」と雲の上を指さして悦に入ったりした。

 今回の山旅は、テント泊を試すのが第一の目的であった。テント泊は素晴らしい。でも、これを担いで山深くを訪れたり、山々を縦走する気にはならない。と言うのが今の感想である。来年また、どこかのテント場で夜を過ごすのが楽しみである。
 そして、絶好の天気に恵まれて、奥穂高岳、涸沢岳を楽しめたのも大きな収穫であった。また2週間後に訪れるときには、山々がどんな姿で迎えてくれるだろうかと楽しみである。


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